「デッドアイ・ディック」
ある精神状態の時、私はカート・ヴォネガット「デッドアイ・ディック」(浅倉久志:訳、ハヤカワ文庫SF)を読みたいと思います。それは落ち込んでいるときで、もっというと「死んでしまいたい」と漠然と感じているときです。それも、例えば恋人にフラレたとか仕事でポカしたとかそういうハッキリした理由があって落ち込んでいるときではなくて、何も特別な問題はないし幸福でも不幸でもない日常のどこかでふっとそんな落ち込みが心を真っ暗にする、そんなときなのです。
シニカルな笑いがたくさんあってとても面白い本なのです。が、決して普通の意味での明るい物語ではありません。人によっては、この本を読んだら逆に落ち込んでしまうかもしれないとも思います。でも私はこの本を読むと、「人生」に関しての自分のつまらないこだわりや落ち込みをぐるりと引っくり返されるような、そんな気持ちになるのです。
主人公が物語のなかで紹介する料理のレシピも私を元気づけてくれます。死にたいなんて思った時、その気持ちと最も遠い所にある行為のひとつが料理だからかもしれません。
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