復活した近鉄アート館で伊藤えん魔プロデュース「コロニー」マチネを観てきました。近鉄アート館はあのあべのハルカスの近鉄百貨店内にあります。復活後のアート館はもちろん、あべのハルカスに行くのも初めてだったので楽しかったです。展望台は行列してました。
彼らはそこに生まれ落ち、目覚めた。やがて彼らは戦いを始める。彼らは強力で獲物はすぐいなくなった。「ただ冷静に狩れ」狩り場は広がり、動くもの、生きもの、全てを彼らは狩る。感情はほとんどない。欲望もなく狩り続ける。だが闘いより怒り、狩りより悲しみ、宿命より喜び。「失われた何か」を知ろうとする彼が現れる。
フライヤーにあったこの文章を読んで、正直「期待出来ない…」と思っていました。前作「チェス」にちょっと似ているし、目新しさが感じられないし…。実際に観たらとてもおもしろくて最近のえん魔プロの作品でも特に印象に残って好きな作品で、いい方に想像を裏切られたのでよかったです。ですが、この文章は「遠からずとも当たらず」って気がします。
強大な力をもつ女王に統治された王国の繁栄と滅亡の物語で、ただ戦い狩ることだけに生きる女戦士クオーツ、通常ひとりであるのに4人も生まれてきた王女たち、たったふたりの男であり王女たちの夫となるアイロンとプルート、戦いに破れ捕虜となったビリジアンたち、クオーツたちに攻め込まれるミツの国、そして戦士でありながら愛について考える異端者アビーの物語。
わりと最近に夫が貸してくれた
百田尚樹「風の中のマリア」を読んでいましたので、舞台が始まるとすぐに「これはそういう世界のハナシなのか」とすぐに分かりました。そんな偶然がなくても普通に舞台を観ていれば武器や生活、捕虜たちの名前などから徐々にコロニーとは何なのか、彼らのおかれている世界がどういうものなのかが分かってくるように構成されていました。わたしは、説明が少なすぎるひとりよがりな作品はだめだと思うけれど、何もかも(特に台詞で直接)説明しすぎる作品はもっとだめだと思っています。この芝居はそのあたりのバランスがよくて観やすかったです。世界観も出来上がっているので物語に破綻がありません。「悪魔の石」というファンタジックな要素も、決してファンタジーではなく重要なアイテムとなるのは完成された世界観があるからだと思いました。
そしてそれが分かると、異様に見えていた彼らの行動、考え、そして行く末が高度に最適化された生存戦略のもとにあることが分かってきます。実際の彼らが何かを考えているかは分かりませんが、「生きる」ということが個々のいのちだけの話ではないという大きな物語が透けて見えてきます。そういう意味で、わたしにとってものがたりの中心はアビーではなく戦士クオーツであり、女王ダイヤであり、ミツの王女シルクだなあと思いながら観ていました。
えん魔プロにしては笑いの要素が少なめだったように思いましたが、突然出てくるヘンな勝負→ヘンなヅラをかぶる罰ゲームはありました。それ以外にも毛髪ネタが多くてハラハラしました…。